Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





E




(勝手に囃し立てられてこれ以上涼介に迷惑がられたら

どうしてくれるのよ!)


 しかし、そんなことを本人がいる前で言えるわけもなく。

みのりは自分の気持ちを隠すことにした。


「た、太一君? 君は何か勘違いをしているようね?」


 満面の笑みを向けたはずだが、少年にはそうは映らなかったようだ。

ヒッと小さく悲鳴をあげ、座ったまま後ずさる。ちょうどいい機会だ。

たまに余計なことを言う太一には、一度きちんと話をつけたほうが

良いだろう。


(あの子の一言で私の気持ちが涼介にバレちゃったら

たまったものじゃないもの)


 しかし太一へ詰め寄ろうとした時、眼前にプリンの容器が差し

出される。みのりは踏み出そうとした足をとめ、まばたきを繰り返した。


「お嬢さま、これ、美味しい」


 いつの間にか涼介からプリンを取っていたらしい。

紅がプリンの脇から顔出し、急かしてくる。


(そんなに美味しいのかしら?)


 自己主張をほとんどしない紅が、わざわざ割り込んでくるくらいだ。

味は確かなのだろう。それとも甘い物を食べて落ち着けと言いたいの

だろうか。


(さっきのことまだ気にしてるのかしら?)


 主より上司の命令に従ったのだから、真面目な紅が気に病むのは

当然かもしれない。みのりは、彼女を安心させるために差し出された

プリンを手に取った。










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