Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
三
E
(勝手に囃し立てられてこれ以上涼介に迷惑がられたら
どうしてくれるのよ!)
しかし、そんなことを本人がいる前で言えるわけもなく。
みのりは自分の気持ちを隠すことにした。
「た、太一君? 君は何か勘違いをしているようね?」
満面の笑みを向けたはずだが、少年にはそうは映らなかったようだ。
ヒッと小さく悲鳴をあげ、座ったまま後ずさる。ちょうどいい機会だ。
たまに余計なことを言う太一には、一度きちんと話をつけたほうが
良いだろう。
(あの子の一言で私の気持ちが涼介にバレちゃったら
たまったものじゃないもの)
しかし太一へ詰め寄ろうとした時、眼前にプリンの容器が差し
出される。みのりは踏み出そうとした足をとめ、まばたきを繰り返した。
「お嬢さま、これ、美味しい」
いつの間にか涼介からプリンを取っていたらしい。
紅がプリンの脇から顔出し、急かしてくる。
(そんなに美味しいのかしら?)
自己主張をほとんどしない紅が、わざわざ割り込んでくるくらいだ。
味は確かなのだろう。それとも甘い物を食べて落ち着けと言いたいの
だろうか。
(さっきのことまだ気にしてるのかしら?)
主より上司の命令に従ったのだから、真面目な紅が気に病むのは
当然かもしれない。みのりは、彼女を安心させるために差し出された
プリンを手に取った。
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