Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





IB




 やっと思い出してくれたらしい。みのりは、涼介が頷くのを見て

内心で安堵のため息をつく。

そして、叔父あるいは義理の兄かもしれない男を見据えた。


「高松さん、申し訳ありませんがこれから私たち話し合いを

しなくてはいけなくって」


 彼はどんな反応を取るだろうか。高松の表情を窺いながら言葉を

重ねる。しかし、高松はきょとんとした顔のまま動こうとしない。

みのりは、そんな男の態度に苛立ちを覚え語気を強めた。


「もう十分、獣人の方々の住まい等の見学はできたと思いますので

そろそろ退席していただけないでしょうか?」

「そういうわけですので、よろしくお願いいたします」


 碧が掴んでいた高松の肩を押し戻す。そして埃を払うように軽く

彼の肩を叩き、頭を下げた。そのあとに涼介が続く。


「申し訳ありません。これは黄梅の問題ですので。

都の方にお見せするわけにはいかないんです」

(そうか、涼介みたいに言えばよかったのね)


 早く高松を退出させたいという気持ちばかりが先行して思い

つかなかった。涼介が簡単に地図を広げたときは肝が冷えたが、

ここぞと言う時にはやっぱり頼りになる人だ。みのりは、毅然とした

態度を高松へ向ける涼介の顔をこっそりと見つめた。










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