Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
三
IB
やっと思い出してくれたらしい。みのりは、涼介が頷くのを見て
内心で安堵のため息をつく。
そして、叔父あるいは義理の兄かもしれない男を見据えた。
「高松さん、申し訳ありませんがこれから私たち話し合いを
しなくてはいけなくって」
彼はどんな反応を取るだろうか。高松の表情を窺いながら言葉を
重ねる。しかし、高松はきょとんとした顔のまま動こうとしない。
みのりは、そんな男の態度に苛立ちを覚え語気を強めた。
「もう十分、獣人の方々の住まい等の見学はできたと思いますので
そろそろ退席していただけないでしょうか?」
「そういうわけですので、よろしくお願いいたします」
碧が掴んでいた高松の肩を押し戻す。そして埃を払うように軽く
彼の肩を叩き、頭を下げた。そのあとに涼介が続く。
「申し訳ありません。これは黄梅の問題ですので。
都の方にお見せするわけにはいかないんです」
(そうか、涼介みたいに言えばよかったのね)
早く高松を退出させたいという気持ちばかりが先行して思い
つかなかった。涼介が簡単に地図を広げたときは肝が冷えたが、
ここぞと言う時にはやっぱり頼りになる人だ。みのりは、毅然とした
態度を高松へ向ける涼介の顔をこっそりと見つめた。
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