Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
三
IIE
「確か、橋を渡ると獣人たちの居住区である菜芽俸(ながぶち)に
入るのよね?」
みのりの声が聞こえてくる。
どうやら彼女も蝶布橋のことを知っていたようだ。
(俺って役に立ってないなあ……)
必ず助ける、と豪語しておいたくせにこの体たらく。
情けなくて涙もでない。
隣には何が気に食わないのかずっと鋭い視線を送ってきている紅がいて、
容易にみのりへの発言も許されない雰囲気だ。
(まあ、お兄さんの恋敵だもんなあ)
そこまでわかりやすい行動をしているつもりはないのだが。
だが、意識するより先にみのりへ視線を向けてしまっている気は
しないでもない。
(ちょっと気をつけておかないとな……)
このせいでみのりの恋路を邪魔してしまうようなことになっては
元も子もないだろう。
無理やり視線を明後日に向けると、野臥間と目が合った。
「菜芽俸っつうと、あの橋のことだべな」
確認するように告げられ、涼介は目を瞬く。
「へえ。そうなんだ。よく両者とも許したなあ」
獣人と人間が行き来できるような場所がある。
それはみのりの夢の実現が案外絵空事ではないという証拠にもなるだろう。
(まあ、それをあの美都子様が良しとするかどうかはわからないけど)
先のことを思って天を仰いでいると、野臥間が心外そうに口を開いた。
一つ前を読む GPの部屋に戻る 次を読む
|