Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





IIF




「許すもなにも強制的に川向うへ追いやられただけだべ。

そのせいでわしら北側の獣人と南側の獣人は行き来ができなくなったんだべ」


 涼介は視線を野臥間に向ける。

やはり恨んでいるのだろうか。

だが、見つめた先にある野臥間の表情はただ悲しげで、

涼介は安易な考えをした自分を恥じた。

胸が締めつけられるように痛む。


「そうだったんですか。橋がかかっているということは和平を結んだことが

あるのかと思ってしまって……」


 正直に告げると、みのりが小さく頭をさげる。


「そのなんていうか、すみません」


 自分もこんな気持ちになるくらいだから、彼女はもっと複雑な気分だろう。

傍に行って励ましたい。

だが、みのりの肩にはすでに紅の手が置かれていた。


(お呼びでないよなあ……)


 頬を掻いていると、野木崎が声をあげた。


「そんなことがあったなんて知らなかったわ」


 しみじみとしたその口調に首肯していると、野臥間も深く頷く。


「だからわしらは、いつか和平できる日がくることを願ってるんだべ」


 淡々とした声音だが力強さを感じさせる野臥間の言葉に、涼介は同意する。


「俺たちもです」


 すると、それまで黙っていた小越が机を叩いた。


「ええ! そうですよ!」


 身を乗り出してくる小越に驚いていると、太一が手をあげる。


「ぼくも!」


 彼は彼なりに本気なのは知っている。

元気よく告げる邪気のない言葉に、涼介は口元を綻ばせた。










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