Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
三
IIH
「ありがてぇべ。人間であるあんたたちからそんな言葉が
聞けたんだ、麗ちゃんと朔ちゃんに自慢するべ」
ぐしゅぐしゅと野臥間が袖で涙を拭っている。その涙に野木崎も
つられてしまったらしい。指先で左右の目頭を交互に押さえていた。
「さて話がしんみりとしてしまいましたが、
蝶布橋に行くのはいつにしましょうか?」
碧が部屋の空気を入れ替えるように手をポンと叩き、みんなを
見回す。それに涼介が応えた。
「今すぐではいけないんですか?」
みのりは側近の質問を訝しく思いながらも涼介の意見に賛同した。
「そうよ。今から行けばいいじゃない。雪姫があんなにかき氷、
かき氷って言っていたんだからって、その雪姫はどうしたの?」
「おお! そういえば見てませんな」
無理やり気分を上げようとしているのかもしれない。
さっきまでの山波とは違い、声をあげきょろきょろと雪姫を探す。
おもむろに紅が、雪姫が寝ている籠をテーブルの上へ置いた。
「お嬢さま、ここ」
籠の中で雪姫がすやすやと眠っている。
麻里が目じりを下げ、うっとりと雪姫を見た。
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