Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
三
III@
「それならなおさら早く行きましょうよ」
「俺もそれがいいと思います」
涼介が背中を押すように同意する。それが嬉しくて自然と頬を
緩ませていると、突然野木崎が大声を出した。
「ちょっと待った!」
野木崎の隣に座っている麻里が、
胸元を押さえながら野木崎へ視線を向ける。
「ど、どうしたんです?」
「今から行くとなると帰りが遅くなるでしょう?」
たしかにすでに日が傾き始めている。
みのりは野木崎の質問にこくりと首を縦に振った。
それを見て、彼女が困ったように顔へ手を当てる。
「そうなると私も太一君も一緒に行くことはできないわ」
申し訳なさそうにハの字に眉を下げていた野木崎だったが、
おもむろに居住まいを正し涼介へ顔を向けた。
「それに教授のところで羊羹と今も邦夫さんのところでプリンを
食べたからなんとかなってるけど、昼食を抜きのままなのを
梅畑君忘れてないかしら? カズちゃんに太一君のことを
頼まれたのにこれじゃあ文句を言われてもしかたなくなっちゃうわよ」
幼い子へ言い聞かせるように話す野木崎の言葉に
みのりは目をまばたかせた。
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