Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





IIIC




「なんだ、飯食べてないんだべか? 今、出前でも取ってくるべ」


 立ち上がりかける野臥間をみのりがとめる。


「お構いなく。太一君も野木崎さんも涼介も大丈夫よね?」

「ああ。俺はいいよ。本当にお構いなく」

「うん。大丈夫だよ」


 みのりの考えが読めたような気がして頷くと、太一も同意してくれる。


(きっとこのまま橋へ向かうつもりなんだな)


 そうでなければ、いつ何時、

美都子や雅秋に妨害されるかわかったものではない。


(みんなの身の安全も保証できないしな……)


 どちらかと言えば、太一は危なくなくなるまで自宅で

待機していてもらうほうがいいのかもしれない。

だが、一刻も早く黄金梅を無くさなければならないこともまた確かだ。

黄金梅が無くなり市が開かれれば、

獣人との問題ももっと多角的に話し合うことができるようになるかもしれない。

互いが同じテーブルで話すことが可能になれば、

太一の祖母の苦しみを癒やす術も見つかる可能性だってある。


(とにかく、早く蝶布橋へ向おう)


 内心で頷いていると、野木崎が口を開く。


「私も平気です。ありがとうございます。それはそうと梅畑君、

あなたは私の話を聞いていたの?

明日は学校があるでしょう? 大学生は毎日学校へ行かなくていいかもしれないけど、

みのり様や小越さん、それに山波さんも毎日暇じゃないのよ?」


 野木崎の正論に涼介は声を詰まらせる。


「俺だって暇じゃないんですけども。

野木崎さん、案があるなら端的に言ってもらえるとありがたいです」


 これだから子供は、と呆れたように言われた気が

してとっさに言い返した言葉を、野臥間が遮る。


「そうか。腹が減ったら遠慮せずに言っていいだべ」

「ありがとうございます」

 優しい微笑みに毒気を抜かれ、涼介は今一度深く一礼した。










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