Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
一
H
(そりゃ、ここぞって時は助けてくれたし。
かっこよかったけど……だからってこの状況はないでしょう!)
一体、何が涼介を駆り立てているのだろうか。
さっき訊いたことにもまだ応えてもらえていない。
(お母様に会ったから私を連れて行こうとしてるの?)
当主の命令に逆らうような人間はいない。美都子が涼介に会って
言い聞かせたのだろうか。
(でもお母様の命令で動いているって感じじゃないのよね)
もし、母からの指示ならばこんな風に力任せで連れて行こうとは
しないはずだ。言葉巧みに説得して、帰らせようとするのでは
ないだろうか。それに周りにいた人間たちの乱入で有耶無耶にして
しまったが彼は、美都子に対して暴言に近いことを言っていた。
(お母様のことを『わからず屋の美都子様』なんて言えちゃう
なんて、こいつってもしかしたら大物なのかも?)
厳つい顔をした山波でさえ、そんなことは言えないだろう。
内心で涼介のことを感心していると、彼はさらに腕に力を込めて
きた。
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