Gold Plum

第六章


対峙


〜律子＆麻里の場合〜


二


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「……人間は悪いやつだ」


　すべての人間をひとくくりで捉えている満の考え方に律子は疑問を

抱く。


「本当にそうかしら？　満君だって、麻里さんに会って今まで感じて

いた人間とは違うって思ったことあるんじゃない？」


　思ったままをぶつけると、麻里も満を説得するかのように言葉を重

ねてくる。


「悪い人もいればいい人もいます。獣人も人間も変わりません。

そのことを他の人たちに伝えて広めていくことができれば、

両者の軋轢を埋めることはできるかもしれませんよね」

「長さんだって心の奥底では感づいてらっしゃるわよ」


　直実が、下を向き押し黙る満を気遣うように言った。それが青年には

気に障ったのだろう。拗ねた子どものような態度を見せてきた。


「俺は、別に」


　麻里がそっとため息をつく。彼女の瞳には満の反抗が、拒絶に映って

しまったのかもしれない。


（違うのよ麻里さん！　たぶんだけど満君にも色々あるのよ。うん。

私の勘がそう告げてるわ！）


　律子は目で訴えかける。しかし、俯いてしまった麻里には届かな

かった。一人悶々としていると、直実が窺うような素振りを見せる。


「だって、麻里さんのことを想っているんでしょう？」


　義姉の言葉に、満が立ち上がった。勢いよく動く椅子の音に、

下を向いていた麻里が顔を上げる。


「満さん？」

「敵だ。俺は、違う！　約束したんだ！」


　言うが早いか満はそのまま店を出て行く。

捨て台詞のように吐き出された言葉は、彼が自身に言い聞かせている

ような叫びに律子には聞こえた。