Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
三
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「ふー。やっと着いた。なんだか久しぶりな気がするよな」
車から出るなり、涼介が両腕をあげ全身を伸ばす。
みのりは、のんびりとした様子の彼に少しだけ呆れた。
「何呑気なこと言ってるのよ!
そんなことより山波さんのことでしょう」
「わかってるよ。んじゃ、さっそく帰宅と行きますか」
本人にも自覚があったのかもしれない。涼介は頬を指でかきながら、
明後日のほうを向いた。それがなんだか可愛らしく映り、みのりは
口元を綻ばせた。
ふいに袖を引っ張られ、視線をずらす。
きょろきょろと辺りの様子を窺っていた紅が、顔を上向かせていた。
「ここに、いる。間違い、ない」
紅がすんすんと鼻を鳴らし、辺りを警戒している。その姿は、
仔犬が周囲の匂いを確認する姿を彷彿とさせた。碧はそんな彼女の
行動に腰砕け状態らしい。うっとりとした表情で紅を見つめている。
「あーなんて可愛いんだ。僕の紅」
「どうして僕はここにいるんだろう」
「鹿さん、当たり前」
背後から小さく漏らす飛田の言葉に、紅が胸を張り応える。
同じ獣人だからなのか。あまり前へ出ることのない紅が、どうしてか
飛田が話すときだけは率先として話に加わっているような気がする。
しかし飛田はそんな紅の強引な言い分に顔を引きつらせていた。
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