Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
三
A
「そ、そうですか……」
飛田が紅の威圧に一歩後ずさるのと同時に、碧が割り込んでくる。
「ちょっと飛田さん、僕の紅が可愛いからって近づきすぎじゃない
ですか!」
「す、すみません」
飛田が襟足へ手をおき、頭を下げる。
碧の検討違いなやきもちに謝ることはないのに律儀な人だ。
みのりが内心でため息をついていると、いつもどおりの反応を紅が
した。
「兄さん、うざい」
「紅ー」
碧が紅へ縋りつく。みのりは、お決まりのパターンになっている
一連の動作にぽつりと呟いた。
「なんでみんな緊張感がないのかしら……」
飛田を巻き込みじゃれ合っている側近たちの姿に、肩の力が抜けて
いく。みのりは、彼らを無視し涼介のあとを追いかけた。
(もしかして私の緊張をほぐすためにわざとやっているとか?)
いや、それはないか。自身の考えを否定していると、涼介の家が
はっきりと見えてくる。黒い瓦屋根に白い壁。洋風な実家とは
まったく違う、おもむきのある日本家屋が待ち構えていた。
どこか威圧的に感じるのは、歓迎されないとわかっているから
だろうか。みのりはごくりと唾を飲み込む。
ふいに涼介が立ち止った。いよいよだ。みのりも、彼にならい
歩を止める。拳を握りしめ涼介を見ると、ポケットからカードを
取り出し、カメラへ向かって静止するところだった。
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