Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





A




「そ、そうですか……」


 飛田が紅の威圧に一歩後ずさるのと同時に、碧が割り込んでくる。


「ちょっと飛田さん、僕の紅が可愛いからって近づきすぎじゃない

ですか!」

「す、すみません」


 飛田が襟足へ手をおき、頭を下げる。

碧の検討違いなやきもちに謝ることはないのに律儀な人だ。

みのりが内心でため息をついていると、いつもどおりの反応を紅が

した。


「兄さん、うざい」

「紅ー」


 碧が紅へ縋りつく。みのりは、お決まりのパターンになっている

一連の動作にぽつりと呟いた。


「なんでみんな緊張感がないのかしら……」


 飛田を巻き込みじゃれ合っている側近たちの姿に、肩の力が抜けて

いく。みのりは、彼らを無視し涼介のあとを追いかけた。


(もしかして私の緊張をほぐすためにわざとやっているとか?)


 いや、それはないか。自身の考えを否定していると、涼介の家が

はっきりと見えてくる。黒い瓦屋根に白い壁。洋風な実家とは

まったく違う、おもむきのある日本家屋が待ち構えていた。

どこか威圧的に感じるのは、歓迎されないとわかっているから

だろうか。みのりはごくりと唾を飲み込む。


 ふいに涼介が立ち止った。いよいよだ。みのりも、彼にならい

歩を止める。拳を握りしめ涼介を見ると、ポケットからカードを

取り出し、カメラへ向かって静止するところだった。










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