Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





CIC




(市長と面と向かって話すことだって嫌なはずなのに……)


 野臥間の家で聞いた涼介の幼い頃の話を聞けば、彼がどれほど

市長から虐げられてきたかがわかる。自分自身、母に虐げられたとは

思ってはいない。だが、涼介にとっての市長は、自分にとっての母、

美都子と同じ関係性だと言えるだろう。顔を合わせるだけで緊張を

強いられ、思っていることが上手く言葉にならない。

同じ空間にいるだけで、手足が冷たくなる。自分にとっての母は

そういう人だ。きっと涼介も似たような感覚を抱いているに違いない。

 それなのに彼は市長から目を逸らさずまっすぐ見つめ返していた。

どれほど勇気のいることだろう。脇につけられた手が強く握りしめ

られている。微かに震えているそれを見て、みのりは小さく彼の名を

呼んだ。


「涼介……私からもお願いします」


 弱かった自分と向き合い、前へ進もうとする彼を見習いたい。

そんな一心からみのりも市長へ願い出る。沈黙が辺りを包んだ。

小さな衣擦れと息遣いだけが聞こえてくる中、溌溂とした声が響く。


「結構いい案なんじゃないかしら? ねえ、愛しの旦那様?」


 市長は、腕を組みむっつりと黙り込んでいる。

彼の妻、美紀がニコリと微笑みながら夫の肩へ手をかけた。










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