Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
三
CIC
(市長と面と向かって話すことだって嫌なはずなのに……)
野臥間の家で聞いた涼介の幼い頃の話を聞けば、彼がどれほど
市長から虐げられてきたかがわかる。自分自身、母に虐げられたとは
思ってはいない。だが、涼介にとっての市長は、自分にとっての母、
美都子と同じ関係性だと言えるだろう。顔を合わせるだけで緊張を
強いられ、思っていることが上手く言葉にならない。
同じ空間にいるだけで、手足が冷たくなる。自分にとっての母は
そういう人だ。きっと涼介も似たような感覚を抱いているに違いない。
それなのに彼は市長から目を逸らさずまっすぐ見つめ返していた。
どれほど勇気のいることだろう。脇につけられた手が強く握りしめ
られている。微かに震えているそれを見て、みのりは小さく彼の名を
呼んだ。
「涼介……私からもお願いします」
弱かった自分と向き合い、前へ進もうとする彼を見習いたい。
そんな一心からみのりも市長へ願い出る。沈黙が辺りを包んだ。
小さな衣擦れと息遣いだけが聞こえてくる中、溌溂とした声が響く。
「結構いい案なんじゃないかしら? ねえ、愛しの旦那様?」
市長は、腕を組みむっつりと黙り込んでいる。
彼の妻、美紀がニコリと微笑みながら夫の肩へ手をかけた。
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