Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
三
CIA
「そういえば、
逃げるのだけは一人前、とかよく言っていたね」
むっとした。
なんでほとんど知りもしない他人にそんなことを
言われなくてはならないのだろう。
スマホをパンツのポケットにしまい込み黙って茶をすすっていると、
碧が片頬をあげた。
「弟を信じず、雁字搦めに縛りつけ命令するだけ兄がいたら
逃げたくもなりますけどねー。あ、失礼。ただの独り言です」
碧が雅秋へ皮肉をぶつける。
かばってくれたのだろうか。
ほとんど個人的な恨みからくるものなのかもしれないが、
それでも嬉しくて碧へ目礼する。
それが不満だったのだろう。
雅秋が碧を半眼で見やった。
「えらく大きな独り言じゃないか、碧君」
口の端に笑みを浮かべつつ2人が見つめ合う。
目が笑ってないことだけは確かで、
とめたほうがいいのか迷っていると、階段を上ってくる足音がした。
「まあまあ、ちょっと落ち着いてくださいよ」
テーブルへ近づきながら、両手で制止を求める。
困ったように眉をさげている雅仲の言葉を聞き、
涼介はほっと胸を撫で下ろした。
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