Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





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 市長と向き合おうとしている涼介の役に立ちたい。

そんな思いからみのりは、必死に言い募る。


「涼介の言葉をちゃんと聞いてあげてください!

涼介はあなたのあやつり人形じゃないんですよ。

まるで束縛……いいえ、これじゃあ束縛を通り越して呪縛です。

涼介には涼介の人生があるのに……人の自由を奪う権利なんて

あなたにはないはずです!」


 市長から視線を逸らすことなく告げる。

一息で言い切ったため息が切れた。それでも言いたいことは

言ったはずだ。


(どうか市長の胸に届いて!)


 しかしみのりの願いは雅秋には響かなかったようだ。

軽く微笑んだあと、肩を竦め見つめ返してきた。


「あやつり人形だなんて思っていませんよ。

ただ、この子は昔から私が直々に試練を与えなければ自ら

考えることもしない奴でしてね」


 彼のために言った言葉は、

もしかしたら自分が言ってもらいたい言葉だったのかもしれない。

母から言われ続けていた呪いのような言葉。


 立派な当主になるため、『私』を捨て『公』に生きろ。

 黄金梅と黄梅市を守るためだけに存在していると自覚しろ。


 いつも逃げ出したかった。自分を見て欲しい。何度も訴えた言葉は

毎回切って捨てられる。だから涼介の気持ちが痛いほどわかった。

 市長に彼の気持ちが通じれば、自分の気持ちも母に伝わるかも

しれない。そんな打算的な思いが雅秋にはわかっていたのだろうか。

すげなく返された言葉に、みのりは感情をむき出しにして叫んだ。










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