Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





CIIB




「わからないかもしれませんが、これも私なりの愛情なのですよ」

「そんなの愛情じゃない。

もし本当にそう思うのでしたら娘さんや奥さんにも同じように

できるんですか?」

「あれらは二人とも強いですからな。やる必要はまったくありません」


 間髪入れずに反論するも、彼にとっては暖簾に腕押しらしい。

まったこたえた様子がない。これ以上何を言えば市長の胸に響くの

だろうか。みのりは悔しさに下を向き、唇を噛んだ。そこへ今まで

傍観していた次男が口を開く。


「兄さん、それは違うだろう?」

「何が違う?」


 市長の声音が少しだけキツイものに変わった。

すぐ下の弟が異を唱えるとは思っていなかったのかもしれない。

 視線をあげると、市長が雅仲を睨んでいた。だが雅仲も怯むことなく、

市長を見つめている。


「兄さんの愛情のかけ方が他の人にとっては苦痛であることも

あるってことだよ」


 諭すように語られた雅仲の持論に、みのりは我慢できずに

突っ込みを入れる。

「それのどこが愛情だって言うんですか!」

「試練を与えることも、また愛情です」


 胸を張りながら返してきた雅仲の言葉に唖然となった。

二の句が継げなくなり固まっていると、紅がぽつりと呟く。


「変態?」

「紅、見てはいけませんよ。世の中にはあのような、

人をいたぶって悦に入ってしまう人間がいるのです。

近づいてはいけませんからね」

「わかった」


 碧の言葉に、紅が素直に頷く。彼らのおかげで、変なふうに

流れ始めた空気が変わった気がする。

みのりは詰めていた息をゆっくりと吐き出した。










一つ前を読む   GPの部屋に戻る   次を読む