Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
三
CIIID
市長との対峙に失われた英気を取り戻すためか、
それとも長兄と向き合った末弟へのご褒美だったのか。
夕食はお重からはみ出るほど大きなウナギが入ったうな重だった。
普段ならば山椒の香りとご飯に染み込んだタレに食欲をそそられ、
嬉々として味わっていただろう。
だが、そのあとに待っている山波への意思確認の前だったため、
みのりは気もそぞろに夕食を終えた。
何度となく確かめた時計の針が、ようやく21時を指し示した頃。
手持ち無沙汰に持っていたカップをテーブルの上へ置く。
「あれから時間もずいぶん経ったわね。
そろそろ山波さんに連絡しても大丈夫かしら?」
「そうだね。そろそろいいんじゃないかな?」
市長という壁を乗り越えたからだろうか。
涼介が爽やかな笑みとともに首肯してきた。
(やだ、なんか涼介かっこいい……)
彼に見つめられ無性に恥ずかしくなる。みのりは顔を火照らせたまま
涼介から視線を逸らし、碧へ指示を出す。
「碧、たしかみんなで相手の声を聞きながら話ができる機能が
あったわよね? それで山波さんに連絡をしてちょうだい」
「かしこまりました」
こちらの提案に碧が一瞬驚いた表情を見せた。
きっと普通の電話をすると思っていたのだろう。
けれどそのことについて指摘することなく、側近は愉しげに
口元を緩めスマートフォンを取り出した。
一つ前を読む GPの部屋に戻る 次を読む
|