Gold Plum

第六章


対峙


〜善郎＆太一の場合〜


四


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「山波さんは覚えていらっしゃるかもしれねーべ。

２２年前、ひどい長雨が続いた日があったんだべ」

（２２年前じゃ、ぼくもリオも生まれてないなー。

お兄ちゃんだったら生まれてたかな？）


　太一が涼介のことを脳裏に思い浮かべていると、

善郎が腕を組み邦夫に応じる。


「ああ、確かにそんな記憶はうっすらですがあります」


　善郎の返答に邦夫は満足げに頷く。そして視線を外が見える

窓へと移した。


「あの長雨のせいで、各地で地滑りが発生したんだべ。

当時わしは特別救助隊の指導を行っていたんだべが、

そんなわしらですら出て行かないと間に合わないほど多くの

救急要請が出ていたんだべ」


　淡々と語られる邦夫の話に、善郎が感嘆まじりに応答する。


「そうだったんですか。

私は若造で土嚢を積み上げるので精一杯でしたが、そのときには

もうバリバリお仕事してらっしゃったんですなあ」

「地滑りに巻き込まれ立ち往生している人間を救助するために

向かった先に大ちゃんがいたんだべ」

「そうだったんですな」


　納得した様子で善郎が首肯する。しかし太一は、邦夫の話に

疑問を感じ、首をかしげた。