Gold Plum

第六章


対峙


〜善郎＆太一の場合〜


四


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「そういえばこの間、

満兄ちゃんが色ボケになったーって言ってるやつがいたぜ」


　リオがごく真面目な口調で告げる。

善郎はいい話を聞いた、と手を打った。


「ほお！　好きな奴がいるのか！　お年頃ってヤツだなあ」


　こんながさつそうな青年にも、やはり純情な部分はあるのだ。

なんだか酷く軽やかな心地になって、もらった茶を飲む。


「そうなんだ。だれだれ？」


　身を乗りだす太一へ、当然、と言い添える。


「そりゃ村の誰かに決まってるだろう。獣人の長なんだし」

「あ、そっか。じゃあ、ぼくは知らない人だね」


　よほどがっかりしたのか肩を落とす太一に同意した。


「ああ。残念だがなあ……」


　本当にどこの誰なのかわかっていたら愉快なのに。

村の獣人仲間ではからかいようがない。


（面白いことを聞いたと思ったんだがなあ）


　娘しかいず、仕事もほぼ一人で行う自分には、

若者と接する機会も少ない。


（まあ、たまに「守る会」で会うこともあるが）


　彼らの色恋をからかったりすることもないだけに、

今回は少々期待していたのだが。


（からかいがいのありそうな顔してるんだもんなあ）


　長だという狼の青年を改めて眺めながら、

身近にそういった気安い者がいる邦夫をうらやましく思った。