Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





IIIF




「おねがいします」


 みのりが告げると同時に、飛田が車を走らせ始める。

車は山沿いのカーブを危なげなく進んでいった。

 涼介は後部座席から夜山に連なる林へ目をやる。

自宅へ着いたらとにかく雅秋と話をし、彼の本心を暴かなければならない。

もし本当に梅八家を自分のものに、などと

思っているのだとしたら、何がなんでも改心させなくては。


(そうだ。俺がなんとかしなくちゃ)


 拳を握り締めていると、ふと背後から明るい光が射し込んできた。


(黒い車?)


 視線を向けると、

黒塗りの車が後ろにぴったりくっついているのが目に入る。

その形には見覚えがあるが、思い出せない。


(みのりさんたちが愛用してるやつに似てるけど、ちょっと違うような……。

けど、我が家のとも似てないしな……)


 前方の碧へ尋ねようと視線を戻した時、飛田が声をあげた。


「んー……なんだろう、あれ……」


 バックミラーから飛田が目を眇めるのが見える。

やはり彼も気づいていたのか。ということは、

やはり厄介な事態である可能性が高い。

面倒なことを、と吐息していると、碧がくくっと乾いた笑い声を立てた。


「そうきましたか……。飛田さん、スピードを少しあげてください」

「へ?」


 訳を告げず指示を出す碧を前に、飛田が声を裏返す。

だが、何かを察したのだろう。次の瞬間飛田は了解した。


「あ、はい」


 素直に頷きスピードを上げる飛田をよそに、

黒塗りの車はさらに車体を前へ寄せてきた。










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