Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





BIE




「わぁ! おじさん、近づきすぎだよ」


 太一が身を引く。だが興奮気味の高松には、少年の悲鳴にも

似た声は届いていないようだった。さらに顔を前へ出し、頭を

下げる。


「雪姫様。お願いです。私たちをお仲間にお加えください」

「近づきすぎだそうだぞ。高松」

「え? あ、はい」


 市長がため息交じりに高松の体を引かせた。高松も市長の声に、

我に返ったのだろう。眼鏡のふちを持ちあげ、苦笑する。


「失礼をいたしました。ですがどうぞよろしくお願いします」


 高松が謝罪を口にした。しかしその時点で籠の中はもぬけの

殻となっていた。今、雪姫は太一の腕を器用に走っている。


(これって教えてあげた方がいいのかしら?)


 そうは思うものの、彼らに手を貸したくはないという気持ちが

強く。みのりは内心で嘆息した。すると、こちらの意を汲んだ

かのように芽衣子が高松へ話しかける。


「あのぅ、もうそこにはいませんよ」

「え? そうなの?」


 飛田が驚いた顔で、籠と恋人の顔を交互に見た。雪姫が籠の中に

いると思っていたのだろう。それは市長と高松も同じだったみたいだ。

まばたきを繰り返す彼らを尻目に、太一が言いにくそうに口を開いた。










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