Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
五
BIE
「わぁ! おじさん、近づきすぎだよ」
太一が身を引く。だが興奮気味の高松には、少年の悲鳴にも
似た声は届いていないようだった。さらに顔を前へ出し、頭を
下げる。
「雪姫様。お願いです。私たちをお仲間にお加えください」
「近づきすぎだそうだぞ。高松」
「え? あ、はい」
市長がため息交じりに高松の体を引かせた。高松も市長の声に、
我に返ったのだろう。眼鏡のふちを持ちあげ、苦笑する。
「失礼をいたしました。ですがどうぞよろしくお願いします」
高松が謝罪を口にした。しかしその時点で籠の中はもぬけの
殻となっていた。今、雪姫は太一の腕を器用に走っている。
(これって教えてあげた方がいいのかしら?)
そうは思うものの、彼らに手を貸したくはないという気持ちが
強く。みのりは内心で嘆息した。すると、こちらの意を汲んだ
かのように芽衣子が高松へ話しかける。
「あのぅ、もうそこにはいませんよ」
「え? そうなの?」
飛田が驚いた顔で、籠と恋人の顔を交互に見た。雪姫が籠の中に
いると思っていたのだろう。それは市長と高松も同じだったみたいだ。
まばたきを繰り返す彼らを尻目に、太一が言いにくそうに口を開いた。
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