Gold Plum





第六章


対峙


〜みのり&涼介の場合〜





IB




 眉間に皺を寄せ、困惑する周囲の空気を破るかのように碧が

手を上げ、前へ出る。


「あーご当主様。お嬢様が襲われたのは獣人ではありませんよ。

山から下りてきた狸です。それも未遂でしたけどね。

ですから正確に言えば襲われそうになった、です」

「狸!?」


 みのりは頓狂な声をあげた。と、同時に安堵する。


(良かった。襲われそうになっただけなのね)

「そんなことが……」

「狸の獣人さんと狸は違うよね?」


 考え込むように呟いた涼介の腕を太一が揺すった。

太一の疑問に涼介が間髪入れずに否定する。


「全然違うよ」

「そ、そうよ! お母様、獣人と普通の獣は違います」


 太一と涼介の会話に勇気をもらい、みのりは美都子へ指摘した。

しかし、母は、聞く耳を持ち合わせていないらしい。


「同じです」


 美都子から一刀両断に言い切られ、みのりは言葉を詰まらせた。

怖気づく自分を助けるかのように野木崎が前へ出る。


「違いますよ。彼らとは会話ができます。

彼らは私たちと何も変わりません」


 野木崎が毅然とした態度で美都子を見据えた。










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