Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
一
IIIIE
「たぬき、囮」
「さすがは僕の紅だ。とっても素晴らしい提案だね」
紅の声ならどんなときでも聞き逃さない碧だ。ミラー越しに
紅へ熱い視線を送っている。そこへ涼介が眉間に皺を寄せ会話へ
加わった。
「囮って、どうするんです?」
みのりは紅たちの話に少しだけ冷静さを取り戻す。
(焦っちゃダメよね。こういう時こそ落ち着かなきゃ。
順番に考えればいいのよ。
つまり、私たちは警察には捕まりたくない。だから逃げる。
そのために必要なもの……囮!)
頭の中で切り抜けるための筋道を組み立て、ハッとする。
そしてまじまじと碧の瞳を映す鏡を見つめた。
「まさか、たぬきを囮に使ってパトカーから逃げるってことじゃ
ないわよね?」
確信めいたものを感じつつも、みのりは半信半疑のまま側近へ
問いかける。紅を挟んだ向こう側から涼介が言葉を飲み込んだのが
わかった。
「なっ!?」
(そうよね。普通はこんなこと思いつかないわよね)
内心で涼介に同情しながら、みのりは碧の返答を待った。
「それ以外にここを切り抜ける方法があるのなら
おっしゃってください。その方法を実行いたしますから」
落ち着き払った碧の物言いはどこか挑発的で、みのりは眉間に皺を
寄せた。だが言い返したくても妙案があるわけもなく、押し黙る。
すると、側近に同意を示す涼介の声が聞こえてきた。
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