Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
七
BIF
「雪姫様……」
涼介が雪姫へ腕を伸ばした。だがそこに雪姫の姿はなかった。
みのりが何も言えず口ごもっていると、太一が呆然としながら呟く。
「雪姫様、消えちゃった……」
突然のことすぎて、まだ実感がわかないのだろう。
自分も同じ気持ちだ。
雪姫の名を呼べば、ケラケラと楽しそうに笑いながら現れるのでは
ないだろうか。あり得ないとは思っていても、そんな淡い期待すら
抱いてしまう。もちろんそんな奇跡のようなことは起こらなかった。
静寂が辺りを包む中、誰よりも早く現実を受け入れたらしい山波が
太一の頭へ手を置く。
「眠ってるだけだ。消えたわけじゃねえよ」
「で、でもぉー」
山波の言葉に雪姫がいないことを受け入れたのだろう。
太一がポロポロと滴のような涙をこぼした。
沈痛な面持ちで野木崎が太一のそばへ近づく。
「太一君……」
野木崎が少年の頬を手で拭っても、涙は一向にとまる気配を
見せなかった。
これ以上、太一を見ていると自分ももらい泣きをしてしまいそうだ。
みのりは唇を引き結びながら、視線を逸らした。
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