Gold Plum





最終章


再生


〜みのり&涼介の場合〜





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「紅に自分の気持ちを打ち明けてないのに、涼介に伝えるのは

何だか嫌だったから」

「ええっと……」


 涼介が割って入ろうとしてくるが、無視して話を続ける。


「だから2人がいるときに、私の気持ちを伝えたかったの」

「そ、そう……」


 曖昧に頷く涼介に内心で首をかしげていると、

今まで黙り込んでいた紅が口を開く。


「お嬢さま」

「ずっと黙っててごめんなさい」


 みのりは紅に何か言われる前に、再度頭を下げた。

彼女から非難の言葉を聞くことが恐かった。

卑怯なことをしているとわかっている。それでも許してほしかった。

みのりは滲み始めた涙を堪えようと、唇を噛みしめる。


「みのりさん……」


 気遣うように涼介から名を呼ばれ、みのりは顔をあげた。

心配そうに見てくる涼介に、胸が締めつけられる。


(紅、ごめん)


 一方的ではあるが紅へのケジメはつけた。

もう一度、涼介に告白の返事をしよう。

みのりは小さく呼吸を整え、真っ直ぐ彼を見つめる。


「涼介。私はあなたのことが好きです」

「ありがとう。本当に嬉しいよ。ありがとう、みのりさん」


 涼介がくしゃっと柔らかく笑った。そして、こちらへ近づき

手を取られる。

涼介の手は、冷え切った指先を溶かすような暖かさだった。










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