Gold Plum
最終章
再生
〜みのり&涼介の場合〜
二
C
顔に何かついているのだろうか。紅がじーっと凝視してくる。
みのりはそのまま視線を逸らすことなく見つめ返した。
しばらくして、納得したらしい。紅がコクンと、頷く。
「義兄さん、行こ」
紅がうちひしがれている碧へ声をかけた。
碧がキラキラした笑みを紅へ向ける。
「紅! もちろんだとも!
それじゃ、お嬢様、車を用意しますのでお待ちください」
「わかったわ」
みのりは呆れながらも、意気揚々と外へ出て行く碧と紅を見送った。
ふと視線を感じ、横を向く。
「お母様」
母、美都子が父、忠臣を連れ立ってこちらへ来た。
ブロンズ色の紬(つむぎ)着物から白いネット包帯が見える。
高松に傷つけられた手は応急処置がよかったのだろう。
幸いにも後遺症が残るようなものではなかった。
それでも10針は縫ったのだから相当なものだ。
その傷も今では抜糸を終えていた。
「もう行くのですか?」
「はい」
美都子に返事をすると、母に寄り添うように立つ父と目が合った。
「気をつけて行ってくるんだよ」
母の紫陽花が刺繍された青地の唐織帯に合わせているのだろう。
群青色のネクタイを揺らし、忠臣がニコリと微笑んだ。
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