Gold Plum





最終章


再生


〜みのり&涼介の場合〜





C




 顔に何かついているのだろうか。紅がじーっと凝視してくる。

みのりはそのまま視線を逸らすことなく見つめ返した。

 しばらくして、納得したらしい。紅がコクンと、頷く。


「義兄さん、行こ」


 紅がうちひしがれている碧へ声をかけた。

碧がキラキラした笑みを紅へ向ける。


「紅! もちろんだとも!

それじゃ、お嬢様、車を用意しますのでお待ちください」

「わかったわ」


 みのりは呆れながらも、意気揚々と外へ出て行く碧と紅を見送った。

ふと視線を感じ、横を向く。


「お母様」


 母、美都子が父、忠臣を連れ立ってこちらへ来た。

ブロンズ色の紬(つむぎ)着物から白いネット包帯が見える。

 高松に傷つけられた手は応急処置がよかったのだろう。

幸いにも後遺症が残るようなものではなかった。

それでも10針は縫ったのだから相当なものだ。

その傷も今では抜糸を終えていた。


「もう行くのですか?」

「はい」


 美都子に返事をすると、母に寄り添うように立つ父と目が合った。


「気をつけて行ってくるんだよ」


 母の紫陽花が刺繍された青地の唐織帯に合わせているのだろう。

群青色のネクタイを揺らし、忠臣がニコリと微笑んだ。










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