Gold Plum
最終章
再生
〜みのり&涼介の場合〜
三
H
「兄さん、待って、アタシ、出る! 鍵、開けて」
車の扉を開けようとしているのだろう。
がちゃがちゃと荒々しい音がする。
(爪立ててたら傷つきまくってるんじゃないのか?)
自分のせいで車が傷だらけになったのだとしたら、
少し申し訳ない気がする。
「ハハハ。危ないからしっかり掴まってるんだよ。
それじゃ、涼介君、お嬢様をよろしくお願いします」
碧に微笑まれ、涼介は反射的に顔をあげた。
「はい!」
心から承知したとの意を込めると、碧が満足げに車を飛ばしだした。
「え、あ、ちょっと……行っちゃった」
駐車場はすぐ近くなのに飛ぶように去って行く。
碧も紅と2人きりになりたかったのかもしれない。
そんなことを思いながらみのりを見遣る。
「いいじゃないか。後で会えるんだからさ」
「そうだけど。なんか碧、強引じゃなかった?」
涼介は納得のいかない様子のみのりの手をやんわりと握る。
「行こう」
優しい声とともに手を軽く引くと、みのりが驚いたように
目を瞬かせた。
「えっ、う、うん」
戸惑っているのだろう。
そんなみのりがかわいらしくて、握り締めた手を強くした。
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