Gold Plum





最終章


再生


〜みのり&涼介の場合〜





H




「兄さん、待って、アタシ、出る! 鍵、開けて」


 車の扉を開けようとしているのだろう。

がちゃがちゃと荒々しい音がする。


(爪立ててたら傷つきまくってるんじゃないのか?)


 自分のせいで車が傷だらけになったのだとしたら、

少し申し訳ない気がする。


「ハハハ。危ないからしっかり掴まってるんだよ。

それじゃ、涼介君、お嬢様をよろしくお願いします」


 碧に微笑まれ、涼介は反射的に顔をあげた。


「はい!」


 心から承知したとの意を込めると、碧が満足げに車を飛ばしだした。


「え、あ、ちょっと……行っちゃった」


 駐車場はすぐ近くなのに飛ぶように去って行く。

碧も紅と2人きりになりたかったのかもしれない。

そんなことを思いながらみのりを見遣る。


「いいじゃないか。後で会えるんだからさ」

「そうだけど。なんか碧、強引じゃなかった?」


 涼介は納得のいかない様子のみのりの手をやんわりと握る。


「行こう」


 優しい声とともに手を軽く引くと、みのりが驚いたように

目を瞬かせた。


「えっ、う、うん」


 戸惑っているのだろう。

そんなみのりがかわいらしくて、握り締めた手を強くした。










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