Gold Plum
最終章
再生
〜みのり&涼介の場合〜
四
H
「今日はどうしたの?」
太一が嬉しそうな顔を涼介に向け尋ねた。涼介もニコリと
微笑みながら応じる。
「うん。みんなにお礼を言いにね」
みのりはテーブルの上に置いてあるどら焼きを、子どもたちに
気づかれないよう手に取った。そしてそれを涼介にそっと渡す。
「ありがとう、みのりさん」
みのりは口角をあげながら軽く首を左右に振った。涼介が
少年たちに見えるように腰を屈める。
「――みんな、どら焼き買ってきたんだ。よかったら食べてくれよ」
「やったー」
「腹減ってたんだー」
「オレもー」
諸手を挙げて喜ぶ太一を皮切りに里夫ともう1人の少年が
嬉しそうに笑い合った。
(きっとこの子が野木崎さんの子ね)
目元が野木崎によく似ている。翔と呼ばれた少年に野木崎の
面影を重ねていると、どら焼きを少年たちへ渡そうとしていた
涼介の動きが止まる。
「あ、これはさすがに汚れてるなあ。木にでも登ってたのかい?
先に手を洗っておいで」
涼介の前に差し出された少年たちの手は本来の肌の色がわかない
ほど真っ黒になっていた。
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