Gold Plum





最終章


再生


〜みのり&涼介の場合〜





H




「今日はどうしたの?」


 太一が嬉しそうな顔を涼介に向け尋ねた。涼介もニコリと

微笑みながら応じる。


「うん。みんなにお礼を言いにね」


 みのりはテーブルの上に置いてあるどら焼きを、子どもたちに

気づかれないよう手に取った。そしてそれを涼介にそっと渡す。


「ありがとう、みのりさん」


 みのりは口角をあげながら軽く首を左右に振った。涼介が

少年たちに見えるように腰を屈める。


「――みんな、どら焼き買ってきたんだ。よかったら食べてくれよ」

「やったー」

「腹減ってたんだー」

「オレもー」


 諸手を挙げて喜ぶ太一を皮切りに里夫ともう1人の少年が

嬉しそうに笑い合った。


(きっとこの子が野木崎さんの子ね)


 目元が野木崎によく似ている。翔と呼ばれた少年に野木崎の

面影を重ねていると、どら焼きを少年たちへ渡そうとしていた

涼介の動きが止まる。


「あ、これはさすがに汚れてるなあ。木にでも登ってたのかい?

先に手を洗っておいで」


 涼介の前に差し出された少年たちの手は本来の肌の色がわかない

ほど真っ黒になっていた。










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