スイーツ娘、村へ帰る。



第二章





「何よ! クロナのヤツ!」

 アローナは先刻のクロナを思いだし、ロブスターに力を入れる。

「あ、やばっ!」

 結構派手な音をたて、赤い生き物の頭と身が離れた。

「まあ、あとで身だけ取りだすからいっか」

 ロブスターを鍋に放り込むと、

またしてもクロナの言動が頭をよぎる。

「そりゃ、先に味見してなかったのはちょっぴり悪かった

かもしれないけど。あそこまで怒る必要はないわよね!」

 そうだ、自分は何も間違っていない。

早く謝ってくればいいのに。

アローナは鍋を見つめながらキッチン台を高く鳴らす。

「だいたいあたしに勝負なんて100年早いのよ! 

ま、クロナのことだから、きっともうすぐ帰ってくるでしょーけど」

 文句を言いつつ茹だってきたロブスターを引きあげた。

身を取り出してトマトと玉ねぎが入った中へ殻を漉(こ)し、

できたスープを乱暴にかき混ぜる。

「夕飯までに戻らなかったら承知しないんだから!」

 アローナは毒づき、そのまま小一時間ほど

コトコトと音をさせて煮立つ赤いスープを眺め続けた。










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