スイーツ娘、村へ帰る。
第二章
4
「何よ! クロナのヤツ!」
アローナは先刻のクロナを思いだし、ロブスターに力を入れる。
「あ、やばっ!」
結構派手な音をたて、赤い生き物の頭と身が離れた。
「まあ、あとで身だけ取りだすからいっか」
ロブスターを鍋に放り込むと、
またしてもクロナの言動が頭をよぎる。
「そりゃ、先に味見してなかったのはちょっぴり悪かった
かもしれないけど。あそこまで怒る必要はないわよね!」
そうだ、自分は何も間違っていない。
早く謝ってくればいいのに。
アローナは鍋を見つめながらキッチン台を高く鳴らす。
「だいたいあたしに勝負なんて100年早いのよ!
ま、クロナのことだから、きっともうすぐ帰ってくるでしょーけど」
文句を言いつつ茹だってきたロブスターを引きあげた。
身を取り出してトマトと玉ねぎが入った中へ殻を漉(こ)し、
できたスープを乱暴にかき混ぜる。
「夕飯までに戻らなかったら承知しないんだから!」
アローナは毒づき、そのまま小一時間ほど
コトコトと音をさせて煮立つ赤いスープを眺め続けた。
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