スイーツ娘、村へ帰る。



第二章





 結局、日が暮れてもクロナは戻ってこなかった。

「本当に帰ってこないつもりかしら?」

 しかたなく1人で夕飯を済ませ、洗い物をし風呂へ入る。

自室のベッドの上で乾かした頭を念入りに溶かしながら、

アローナは唇を尖らせた。

「どうせあの子、あの白い犬のぬいぐるみがないと眠れないくせに」

 クロナが母親から貰ったという白い犬のぬいぐるみを、

何より大切にしていることは昔から知っている。

(届けてあげたほうがいいかしら?)

 あれを腕に抱いていないとよく眠れないはずだ。

アローナはしばし黙考して、首を左右に振る。

「知らない知らない! クロナが眠れないのは自業自得だもの。

たとえ今から帰ってきても家に入れてあげないんだから!」

 拳を握りしめ宣言すると、

声がやけに響く気がしてアローナは眉根を寄せた。

「先に眠っちゃうんだからね!」

 ぽすん、とベッドへ横たわり、天井を見る。

家に1人しかいないという事実になんだか気が重くなり、

アローナは唇を噛んだ。

「ふん!」

 あんな薄情者の従弟など、もう知るものか。

アローナは鼻を鳴らし、ランプを消して無理やり目を瞑った。










一つ前を読む   小説の部屋へ戻る   次を読む






QLOOKアクセス解析