スイーツ娘、村へ帰る。
第二章
5
結局、日が暮れてもクロナは戻ってこなかった。
「本当に帰ってこないつもりかしら?」
しかたなく1人で夕飯を済ませ、洗い物をし風呂へ入る。
自室のベッドの上で乾かした頭を念入りに溶かしながら、
アローナは唇を尖らせた。
「どうせあの子、あの白い犬のぬいぐるみがないと眠れないくせに」
クロナが母親から貰ったという白い犬のぬいぐるみを、
何より大切にしていることは昔から知っている。
(届けてあげたほうがいいかしら?)
あれを腕に抱いていないとよく眠れないはずだ。
アローナはしばし黙考して、首を左右に振る。
「知らない知らない! クロナが眠れないのは自業自得だもの。
たとえ今から帰ってきても家に入れてあげないんだから!」
拳を握りしめ宣言すると、
声がやけに響く気がしてアローナは眉根を寄せた。
「先に眠っちゃうんだからね!」
ぽすん、とベッドへ横たわり、天井を見る。
家に1人しかいないという事実になんだか気が重くなり、
アローナは唇を噛んだ。
「ふん!」
あんな薄情者の従弟など、もう知るものか。
アローナは鼻を鳴らし、ランプを消して無理やり目を瞑った。
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