スイーツ娘、村へ帰る。
第二章
8
「気になるなら一度来てみて。試食会するから」
「ありがとうございます」
我が意を得たりといった笑みを浮かべるカリナに礼を言い、
去っていく彼女を見送る。
扉を閉めながら、アローナはまだ見ぬクルミの味に思いを馳せた。
「種かあ。種って言えば、アーモンドとかを使ったお菓子があったっけ。
クッキーとかチョコとか……」
アローナはパイ生地作りに戻りつつ、
ナッツの入ったお菓子をいくつか思い浮かべる。
だが、どれもいまいちパンチが足りない気がした。
「作ってみたいけどあれだけじゃちょっと捻りが足りないかも」
パイ生地の上からめん棒を転がす手はとめず、一計を案じる。
「アーモンドを粉にしてクリームにしてみるとか……」
アーモンドパウダーをクリームに混ぜたら
新しい味になるかもしれない。
そこまで考えて、あ、と小さな声をあげる。
「けど、それなら不思議堂にあるピーナッツバター
使ったほうがおいしいかも」
あそこのピーナッツバターは程よい甘さだから、
あれを利用したほうが子供からお年寄りにまで
食べてもらえそうな気がする。
「うーん」
腕を組み唸っていると、またしても勝手口からノックの音が響いた。
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