スイーツ娘、村へ帰る。



第三章





「んー……」

 アローナはできたてのアーモンドクッキーを前に呻いた。

どうにも試作がうまくいかない。

クロナの部屋から拝借してきた料理辞典を参考に、

レモン汁やシナモンやらを入れてみたのだが。

「我ながら普通の出来だわ」

 美味しいか美味しくないかと言われたら、美味しくできているとは思う。

だが、それではいまいちオリジナリティーが足りていない。

「もうちょっと、こう……飛び上がりそうなほどの驚きが

欲しいところなんだけど」

 これまではクロナに味見役を頼んでいたため遠慮なく冒険もできたが、

1人ではそうもいかなかった。

「もし悶絶しそうなくらいまずかったら嫌だし、

お腹壊すわけにもいかないし……」

 万が一を考えると、どうしても一歩踏み出すことができないのである。

「このままじゃヤバイわ」

 もっと工夫を凝らさなければクロナには勝てない。

アローナは顎に手をあて台所を行ったり来たりする。

「クロナは何を作るのかしら?」

 辞典がない分作れる物は限られてくるだろうが、

それでも知識は豊富な子だ。油断してはならない。

「あーいいわ! とりあえず町へ行ってみればいいのよ。

何か見つかるかもしれないし」










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