スイーツ娘、村へ帰る。
第三章
5
その店は蔦に覆われた木造の建物だった。
だが、よく見ると看板が出ていない。
近づいてみると、
出入り口の扉にcloseの札がありその下には張り紙があった。
『買い付けのため午後からはお休みします。カリナ』
アローナは肩を落とした。
せっかくヒントになりそうな情報を掴んだのに、と膨れてみるも、
ツッコミはおろか宥めてくれる者もいない。
「クロナだったら絶対二、三言あるはずなのにな」
淋しいと思わなくもない。
脳裏に口煩いクロナが過ぎり、
アローナは慌てて首を左右に振りまくった。
「まあ、ともかく出直すしかないわよね」
気分を変えようと大声で宣言し踵を返し歩きだす。
と、前方から声がかかった。
「あら? アローナちゃん?」
声の主は不思議堂の店主、カリナだった。
一つ前を読む 小説の部屋へ戻る 次を読む
|