スイーツ娘、村へ帰る。
第三章
10
「クロナ様はいつも通りでいらっしゃいますわ。
でも、やはりなんだか元気がなくて。屋敷にいてくれるのは嬉しいですが、
あのようなクロナ様を見ているのは心苦しいんですの」
「そう……」
クロナを思い消沈した様子のイルミラを前に、アローナは戸惑う。
勢いで勝負を受けてしまったが本当にそれでよかったのだろうか。
どう答えていいのか分からず考えあぐねていると、
イルミラが両の目をひたと見据えてきた。
「仲直りしてくださいね」
やにわに手を握り締められアローナは首肯する。
「わかったわ。約束する」
「絶対ですわよ?」
「ハイハイ」
幾度も頷いて無理やり手を引き抜くと、その代わり、と
咳払いしてタルトを手に取った。
「これ、味見してくれない?」
「まあ、おいしそう! これはなんですの?」
イルミラが興味深げにタルトを見つめる。
「洋梨を使ったお菓子よ。普通に食べれるからそこは安心して」
「それなら喜んで、いただきますわ」
イルミラの言葉に口の端を緩め、
アローナはタルトを切り分けイルミラへ手渡した。
イルミラが嬉しげにタルトを口へ運ぶ。
ゆっくりと咀嚼したのち、小さく首をかしげた。
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