スイーツ娘、村へ帰る。



第五章





「よくぞおいでくださいました」

 勝負の朝、イルミラ邸へやってきた自分を迎えてくれたのは執事だった。

「おはよう、ウィンプスさん」

「おはようございます。皆様お待ち申し上げておりますよ」

 笑顔で告げる執事を前にアローナは身を引き締める。

「クロナももういるの?」

「もちろんでございます。すでに準備に入られているかと」

「そう。じゃあウィンプスさん、案内よろしくお願いします」

 息を吐いて笑みを返すと、執事が頷いた。

「はい。どうぞこちらへ」

 手で廊下を示し踵を返す。

アローナは先導する執事の後へつき赤い絨毯の敷かれた廊下を歩く。

いくつかの角を曲がり一際明るい日差しを目に受けたその先に、

みんなの待つ青々とした中庭が広がっていた。

「旦那様、アローナ様がご到着いたしました」

 ウィンプスが亜麻色の髪をきっちりとまとめた背の高い男性に声をかけると、

周囲と談笑していた彼がおもむろに振り向いた。

「ああ、アローナ君。よく来たね」

 破顔して近寄ってきた男性はイルミラの父、ルミナス・イルフォードだった。










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