スイーツ娘、村へ帰る。



第五章





「アローナさん。クロナ様を嫌いにならないでくださいね」

 後をついてきたイルミラが横から声をかけてくる。

「嫌いになんかならないわよ。

そもそもあそこまで捻くれさせちゃったのはあたしが原因なんだし」

 アローナはキッチンにある調理器具を確認しながらイルミラへ答える。

「で、では何に対して怒っていらっしゃいますの?」

 イルミラが不安げに尋ねてくるので、

アローナは作業をとめて大きく息を吐いた。

「こんな事態にしちゃったあたし自身に対してよ」

 無理やり笑顔を作ってイルミラを見やると、

年下の少女は今にも泣き出しそうに声を震わせる。

「アローナさん……」

「さあ、イルミラ嬢。時間まで指定の位置で待っていて。

あたしも少しだけ準備があるから」

 つぶらでまっすぐな瞳に耐えきれず視線を逸らすと、

イルミラが慌てたように頷いた。

「あ、はい。じゃ、がんばってくださいましね!」

 イルミラが涙をそっと拭き、踵を返す。

「ありがと、イルミラ」

 Vサインで見送ると、イルミラが小さく手を振った。










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