スイーツ娘、村へ帰る。



第五章





「紳士淑女の皆様、これよりイルフォード家スイーツ大会を

開催いたしたいと思います。

私は司会のイルフォード家執事でございます。

お見知り置きを」

 司会の執事が開会を告げると、拍手がわき起こる。

執事がうやうやしく一礼し、それに答えた。

「ありがとうございます。それでは早速開会の挨拶を当家が主、

イルフォード様からお願いいたします」

 執事の紹介とともに、イルフォード氏が中央へ立つ。

鷹揚に1つ頷いた後、声を張った。

「皆様、本日は当家のスイーツ大会へお越しくださりありがとうございます」

 イルフォード氏の挨拶は続いたが、

アローナは何気なく瞳を向かいのキッチンへと移動する。

(あ……)

 目が合ったクロナは、自分を睨んでいた。

アローナはそんなクロナを見て少し落ち込む。

(確かにあたしが悪いけど、あそこまで怒ることないじゃない)

 反省してはいるのだし、この勝負が終わりしだい

勝っても負けても謝るつもりでいる。それなのに。

(クロナはあたしのことが嫌いになったのかしら)

 いや、そもそも好きでいてくれたのだろうか。

家族だと思っていたのは自分だけだったのかもしれない。

アローナはたまらず顔を下へ背ける。

そこへ、試合開始を告げるイルミラの声が聞こえてきた。










一つ前を読む   小説の部屋へ戻る   次を読む






QLOOKアクセス解析