スイーツ娘、村へ帰る。
第五章
6
「紳士淑女の皆様、これよりイルフォード家スイーツ大会を
開催いたしたいと思います。
私は司会のイルフォード家執事でございます。
お見知り置きを」
司会の執事が開会を告げると、拍手がわき起こる。
執事がうやうやしく一礼し、それに答えた。
「ありがとうございます。それでは早速開会の挨拶を当家が主、
イルフォード様からお願いいたします」
執事の紹介とともに、イルフォード氏が中央へ立つ。
鷹揚に1つ頷いた後、声を張った。
「皆様、本日は当家のスイーツ大会へお越しくださりありがとうございます」
イルフォード氏の挨拶は続いたが、
アローナは何気なく瞳を向かいのキッチンへと移動する。
(あ……)
目が合ったクロナは、自分を睨んでいた。
アローナはそんなクロナを見て少し落ち込む。
(確かにあたしが悪いけど、あそこまで怒ることないじゃない)
反省してはいるのだし、この勝負が終わりしだい
勝っても負けても謝るつもりでいる。それなのに。
(クロナはあたしのことが嫌いになったのかしら)
いや、そもそも好きでいてくれたのだろうか。
家族だと思っていたのは自分だけだったのかもしれない。
アローナはたまらず顔を下へ背ける。
そこへ、試合開始を告げるイルミラの声が聞こえてきた。
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