スイーツ娘、村へ帰る。
第五章
8
生地の様子を見ながら今朝のうちに砂糖漬けにしておいた洋梨を煮る。
時々灰汁を取りながら、
アローナはタルト生地をオーブンへ投入した。
「焦がしちゃわないように気をつけなくっちゃ」
洋梨を混ぜながらオーブンの具合を見る作業をしばし繰り返す。
生地がこんがりしてきたのを見計らい、生地をオーブンから取り出した。
余熱を取っているうちに、
アローナは肝心の中身作りを開始する。
「面倒だけどもう一回」
バターと砂糖をタルト生地の時と同じように混ぜていった。
卵をゆっくりと入れてしっかり混ぜた後、
アーモンドをすり潰したものと粉を入れてさらに混ぜる。
できたものをタルト生地の上に乗せ、またオーブンへ入れた。
「アローナさんはタルトをオーブンへ入れたようです。
きゃー! クロナさまはなんと黄色い実をきざみはじめました!
なんだかほんわりいい香りがします! 新しいオレンジでしょうか!
さすがはクロナさま! きざみ方が芸術的です!」
イルミラの興奮しきった声につられ、アローナは顔をあげる。
視線を移しクロナを見ると、
クロナが流れるような動作でユズをきざんでいるのが見えた。
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