スイーツ娘、村へ帰る。
第五章
9
クロナを眺めていたアローナは、
ふと漂ってきた香ばしい匂いで我に返った。
「おーっと、大変! のんびりしてる場合じゃなかったわ」
タルトが焼けてしまう前にやるべきことをやらなくては。
アローナは洋梨の様子を見ながら丁寧に灰汁を取っていく。
それからクルミをはじめとする木の実を適度な大きさに切り、
根気よくフライパンで炒りはじめた。
香ばしい薫りがあたりを包み込み、お腹が鳴ってしまう。
(見物場所がキッチンから離れててよかった!)
誰かに聞かれていたら恥ずかしすぎる、とアローナは心底安堵した。
オーブンからタルトを取り出し木の実を炒り終えると、
今度は鍋を用意する。
バター、生クリーム、砂糖と蜂蜜を鍋に入れ、中火にかけた。
沸騰してトロトロになるまで煮詰めると、
火を止めて木の実を入れタルト生地の上へのせる。
生地をまたしてもオーブンへ入れ、
キャラメル色になるまでしっかりと焼きはじめた。
「ここが我慢のしどころね」
アローナはすっかり煮詰まった洋梨のジャムを火からおろす。
待つことしばし、オーブンを覗くとこんがりキャラメル色に
焼けたタルト生地が姿を現した。
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