スイーツ娘、村へ帰る。



第五章





 クロナを眺めていたアローナは、

ふと漂ってきた香ばしい匂いで我に返った。

「おーっと、大変! のんびりしてる場合じゃなかったわ」

 タルトが焼けてしまう前にやるべきことをやらなくては。

アローナは洋梨の様子を見ながら丁寧に灰汁を取っていく。

それからクルミをはじめとする木の実を適度な大きさに切り、

根気よくフライパンで炒りはじめた。

香ばしい薫りがあたりを包み込み、お腹が鳴ってしまう。

(見物場所がキッチンから離れててよかった!)

 誰かに聞かれていたら恥ずかしすぎる、とアローナは心底安堵した。

オーブンからタルトを取り出し木の実を炒り終えると、

今度は鍋を用意する。

バター、生クリーム、砂糖と蜂蜜を鍋に入れ、中火にかけた。

沸騰してトロトロになるまで煮詰めると、

火を止めて木の実を入れタルト生地の上へのせる。

生地をまたしてもオーブンへ入れ、

キャラメル色になるまでしっかりと焼きはじめた。

「ここが我慢のしどころね」

 アローナはすっかり煮詰まった洋梨のジャムを火からおろす。

待つことしばし、オーブンを覗くとこんがりキャラメル色に

焼けたタルト生地が姿を現した。










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