スイーツ娘、村へ帰る。
第五章
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アローナはタルトに洋梨のジャムをかける。
スプーンで格子を描くようにジャムをかけていった。
「完成だわ!」
なんとか納得のいくできになった、と安堵して
クロナを見ると、彼が粉をふるっているのが見える。
ボールに入っているのは、ユズのピューレだろうか。
「やっぱりやるわね……」
粉の入ったユズのピューレをざっくりと混ぜて合わせているクロナの姿に、
アローナは感嘆する。
雑なように見えて繊細な作り方だ。
しばしぼんやり眺めていると、
型に流し込みオーブンへ入れたクロナがおもむろに顔をあげた。
「もしかしてこっち見てるの? ずいぶん余裕だよね」
「余裕だなんて思ってないわ。
ただちょっと綺麗な動きだな、って見惚れてただけじゃない」
「……ふん」
鼻を鳴らし、視線を逸らしてしまうクロナに、
アローナは本当に仲直りできるのかと重い溜め息を落とした。
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