スイーツ娘、村へ帰る。



第六章





「さあ! 試食の開始です! 

審査員の皆さま、どうぞよろしくお願いいたします!」

 イルミラの宣言とともにクロナができたばかりのケーキを切り分け、

審査員の前へと置いていく。

シフォンケーキというよりは平べったく四角いケーキの横に

ホイップした生クリームが添えてある。

審査員たちはケーキを慎重に一口大に切ると、

ゆっくり口の中へ運んでいった。

「まあ! なんて爽やかなんでしょう!」

 口に入れたとたん叫んだのはイルーナである。

続いて彼女の夫、イルフォードが

幸せそうに目を細めたイルーナの横で深く同意した。

「確かに爽やかだ。それにふんわりとしているというよりジューシーだな」

「たぶん果汁が多いからです。

柚子の香りが鼻に抜けて優しい気持ちになれるケーキだわ。

クロナ君らしいですね」

 イルフォードの言葉に答え満足げに唸ったのはカリナだ。

3人の評価を聞くなりイルミラが文字通り飛びあがった。

「まあ! 大絶賛です! 

これはもうクロナさまの勝ちが見えてきたのかもしれません!」

 イルミラが鼻息を荒くして言葉を紡ぐのを聞き流しながら、

アローナはタルトを乗せたワゴンを審査員の前へ持っていった。










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