スイーツ娘、村へ帰る。
第六章
1
「さあ! 試食の開始です!
審査員の皆さま、どうぞよろしくお願いいたします!」
イルミラの宣言とともにクロナができたばかりのケーキを切り分け、
審査員の前へと置いていく。
シフォンケーキというよりは平べったく四角いケーキの横に
ホイップした生クリームが添えてある。
審査員たちはケーキを慎重に一口大に切ると、
ゆっくり口の中へ運んでいった。
「まあ! なんて爽やかなんでしょう!」
口に入れたとたん叫んだのはイルーナである。
続いて彼女の夫、イルフォードが
幸せそうに目を細めたイルーナの横で深く同意した。
「確かに爽やかだ。それにふんわりとしているというよりジューシーだな」
「たぶん果汁が多いからです。
柚子の香りが鼻に抜けて優しい気持ちになれるケーキだわ。
クロナ君らしいですね」
イルフォードの言葉に答え満足げに唸ったのはカリナだ。
3人の評価を聞くなりイルミラが文字通り飛びあがった。
「まあ! 大絶賛です!
これはもうクロナさまの勝ちが見えてきたのかもしれません!」
イルミラが鼻息を荒くして言葉を紡ぐのを聞き流しながら、
アローナはタルトを乗せたワゴンを審査員の前へ持っていった。
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