スイーツ娘、村へ帰る。
第六章
3
「それにこのフルーティーな香りと甘みはなんだろうね。
おそらくジャムだとは思うが……」
顔を上向け考え込むイルフォードへ、アローナは口を挟む。
「えっと、これは、洋梨のジャムです」
緊張で知らず声が裏返る。
気を落ちつけるために胸を撫でていると、イルフォードが嬉しげに手を打った。
「そうか! ラ・フランスか! うーむ……。すばらしい」
唸るイルフォードの言葉を受け、カリナが微笑む。
「はい。木の実と生地の香ばしさと柔らかさ、加えて甘みと苦み、
ふんわりとした芳しい香りが、口の中で絶妙なハーモニーを生み出していますね」
夢見るように嘆息するカリナを見て褒められたことに頬を熱くしていると、
イルフォードが何度も首を上下させた。
「うむ。さすがはアローナ君だ。
このケーキは君にしか作りだすことができない君だけの味だ」
しっかりと目を合わせ告げられた言葉に、嬉しさが爆発する。
「ありがとうございます!」
アローナは踊りだしたい気持ちを抑えつつ、深々と一礼した。
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