卵のつがい
第一章
1−12
「この間買ってもらったモカルーミの葉とユーリエの葉だな?」
アルノーから注文するはずの薬草の名前を言い当てられミラは瞠目
する。しかしそれ以上に覚えてもらっていた喜びのほうが勝り、大き
く首を縦に振った。
「はい! 彼のお土産にはもってこいだと思って」
手紙でも感謝の言葉が綴られていたくらいだ。
これ以上の贈り物はないだろう。
ミラは自信満々にアルノーを見つめた。一瞬後、店内に大きな笑い声
が木霊した。
「ハハハ。そいつはありがたい。少し待っててくれよ」
商品を取りに行ったのだろう。アルノーが奥の部屋へ姿を消す。そ
れを見計らったかのように今度はフィットが口を開いた。
「兄ちゃんに会いに行くの?」
「そうよ」
興味津々というように瞳を輝かせるフィットへミラは頷いて見せる。
その返事に興奮したのか、フィットが鼻息を荒くして迫ってきた。
「そしたら兄ちゃんに、また遊びに来てねって伝えて」
「お安い御用よ。必ず伝えるからね」
断る理由もない。ミラが一も二もなくフィットの頼みごとを引き受
けると、奥からアルノーが戻ってきた。
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