卵のつがい
第一章
1−14
「人の話を最後まで聞かないからこうなるんだぞ」
「ごめん。迎えに来てくれたの?」
全面的に自分が悪い。勢いよく手を合わせ、頭を下げる。
「仕方ねーからな」
薄目を開けエポックを見上げると、照れくさそうに鼻の頭をかく彼
と目があった。
「嬢ちゃんの知り合いかい?」
話がひと段落ついたことがわかったのだろう。今まで黙っていたア
ルノーがカウンター越しから話しかけてくる。品定めするかのように
じろじろとエポックを観察しているアルノーへ、ミラは満面の笑みで
肯定した。
「はい。今回の旅を一緒にしている同僚なんです」
「へえ、そうだったのかい。あ、お代は125カルもらうぜ」
「はい。えっと、125カル、125カルっと……」
払い損ねていた代金を財布から取り出す。その傍らでフィットがエ
ポックへ近づいていくのが見えた。
一つ前を読む 小説の部屋へ戻る 次を読む
|