卵のつがい
第一章
1−18
「必要だろう色気は。どこの世界に女から草もらって喜ぶ男がいるん
だよ」
「うっ」
応戦してくるエポックに一瞬言葉がつまる。何を隠そう自分自身も
薬草を購入したときは最善のものを選んだと思っていたのだが、日が
経つにつれて不安になっていたのだ。それをエポックに見破られたよ
うで、ミラは自分に言い聞かせるように反論した。
「あ、あんたみたいな唐変木と一緒にしないでよね。イースは喜んで
くれたもの。しかも、学園の人にも薬草が欲しいって言われたって書
いてあったんだから」
そうだ。土産をあげるのは医師を目指しているイースなのだから薬
草が何よりも嬉しいに決まっている。ミラは自分で言った言葉に勇気
を取り戻した。
「うへー、頭のいいやつの考えてることはわかんねーな」
エポックは、まったく共感できないと言わんばかりに首を横に振る。
まるでイースと自分たちとでは住む世界が違うと線引きするような言
い方に、胸がギュッとしめつけられた。
「意外と普通の人よ」
イースとの間に境界などない。自分たちと同じ人間なのだと。ミラ
は無意識に呟いていた。
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