卵のつがい



第二章





「なんであの村長さんはピックスの顔に恐怖を感じないのよ!」


 ミラは、重くなった足を引きりながら今日泊まらせてもらう家へ向

かっていた。あのあと、部下に恵まれてますなあ、と楽しげに笑いな

がら村長はピックスを連れて歩いて行ってしまったのだ。歩き続けて

きた疲労もあったが、あのやり取りで残りの体力も持っていかれたよ

うな気がしてならない。ミラは深く息を吐きだし、気を取り直すため

周囲へ視線を向けた。村の子供たちが興味深げにこちらを見ている。

家の壁に身を隠しているから気づいていないと思っているようだ。ミ

ラは身体半分以上出てしまっている子供たちの姿を微笑ましく思い、

くすりと笑った。


「今日からお世話になる、ミラよ。よろしくねー」


 子供たちへ手を振りながら挨拶すると、キャッキャッと声をあげて

返してくる。


「ふふふ、可愛い」


 子供の行動はどこの村でも似たり寄ったりなのかもしれない。違う

場所へ来たことで少しばかり緊張していたが、彼らのおかげで力が抜

けたように思う。気がつけば、目的の場所へついたようだった。村の

少し外れにある色とりどりの草花が群生している建物が、数日間滞在

する家だ。


「あの家ね」


 家が見えたとたん、重かった足が軽くなる。ミラがリュックを背負

い直し早足で向かうと、恰幅のいい白衣をきた男性が扉を開け家の中

から出てきた。










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