卵のつがい



第一章

1−3



「また読んでるのか?」


 草を踏みしめる音と共に聞こえてきた声に読んでいた手紙から顔

をあげる。そこにはからかいを含んでいるときの母親と同じような

笑みを浮かべたエポックが立っていた。自分の倍以上はありそうな

体つきは昔からで、いくら外に出ても日に焼けない真っ白な肌から

ついたあだ名は『白熊』だ。幼い頃、体は大きいくせに気が小さか

ったためよくいじめられていた彼を助けたのはいい思い出だといえ

るだろう。その彼が今は職場の先輩なのだから感慨深い。


「別にいいでしょう。休憩中なんだし」


 からかわれるのが嫌でぷいっとそっぽを向くが、そんな態度でや

めるような幼馴染ではないようだ。わざわざ隣に来てナーブの木に

寄りかかるや、顔を覗き込んできた。


「まぁ、やっとガサツなお前にできた彼氏だもんなー」

「か、彼氏なんかじゃないわよ……」


 声を裏返しながら否定するが、エポックは信じていないみたいだ。


「照れるな、てれるな」

「照れてなんかいないってば!」

「嘘つけ、俺の目を誤魔化そうなんて100年早いぞ」


 エポックの人差し指を目線で追う。顔の中央で止まった指に首を

傾げると、悪巧みを考えている子供のような笑みを浮かべていた。










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