卵のつがい
第三章
17
「いや、アルフ先生の無茶ブリはいつもことだから
……その気にしなくていいよ」
イースが笑みを向けてくる。
しかしそれはどこか硬くぎごちないものだった。
「うん。で、でも助かったわ。本当よ。ね、エポック」
自分だけでは感謝の気持ちが伝わらないかもしれないと思い、
エポックを見る。
エポックもこちらの考えに気づいたようだ。
大げさなまでに大きく頷きながらイースへ顔を向けた。
「ああ、俺からも礼を言うぜ。ありがとうな。
まぁ、ミラは案内だけが嬉しいわけじゃなさそうだけどなー」
気を許すとすぐこれだ。
ミラは再び湧き上がる怒りを今度こそ鎮めずに、
エポックへとぶつけた。
「エポック! あ、あんたイースにまで余計なこと言ったら
ただじゃおかないからね!」
「俺は別に何も言ってねーだろう。
お前が勝手にわめいてるだけだ」
うるせー、うるせーと言いながらエポックが耳の穴に
指を突っ込む。
ミラはさらに追撃しようと口を開く。
だが、イースの囁くような小さな声によって
それは遮られてしまった。
一つ前を読む 小説の部屋へ戻る 次を読む
|