卵のつがい



第三章

24



「……わかった。すみませんピックスさん。

お力にはなれないようなので失礼します」


 イースがピックスへ頭をさげる。


「あ、ああ。こちらこそ無理を言ってしまってすまなかったな」

「いえ、それじゃあ」


 イースはそのまま去って行ってしまった。


(違うの。イースの邪魔をしたくなかっただけなの)


 ピックスがこちらを窺うような視線を送ってくる。

沈痛な面持ちで歩いて行くイースを引き留めたくて、手を伸ばす。

しかしなんと声をかければいいのかわからず、

ミラは口の開閉を繰り返した。

帰って行くイースの姿が小さくなる頃。

彼と入れかわるようにエポックが近づいてきた。


「おい、ミラ。あの言い方はないんじゃないか?

  せっかく彼氏が案内してくれたのにさ」

「じゃあ、なんて言えば良かったのよ!

  嫌われたくなかったんだから仕方ないじゃない!」


 こちらの気持ちなど知りもしないくせに上から目線で指摘してくる

エポックに腹が立った。

八つ当たりだということはわかっている。

だが、一度膨れあがった感情を抑えることができなかった。

しかしこちらがぶつけた怒りはエポックには理解できなかったようだ。

目を丸くし、素っ頓狂な声をあげた。










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