卵のつがい
第四章
8
「別に君が謝る必要はないよ。
僕が勝手に勘違いしてただけなんだからさ」
突き放すようなイースの言い方にミラは泣きそうなる。
だが、自嘲気味に笑う彼のほうが辛そうで、
ミラは胸が苦しくなった。
(やっぱりイースのことを傷つけちゃってたんだわ)
早く誤解を解いて笑って欲しい。
ミラは目線を合わそうとしない
イースの眼鏡の奥に潜んでいる黒い瞳をまっすぐに見つめた。
「ううん。あたしイースの優しさに甘えてたの。
あんな言い方じゃなくて、
もっとあなたのことを考えて言えばよかったって。だから……」
何がいけないのだろうか。
言い訳を重ねれば重ねるほどイースの表情が固くなる。
言葉に詰まり動けなくなると、
今まで視線を下へやっていたイースがこちらを睨んできた。
「あんな言い方って君は何も言ってくれなかったじゃないか。
手紙で書いてくれればよかったんだ。
それなのに突然やって来て……」
会いに来たことをこれほど疎まれていたなんて
思ってもみなかった。
イースに会いたかったのは自分だけで、
彼は手紙の中のやりとりだけを望んでいたのだろうか。
ミラはふいに浮かんできた考えに愕然とした。
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