卵のつがい



第四章





「別に君が謝る必要はないよ。

僕が勝手に勘違いしてただけなんだからさ」


 突き放すようなイースの言い方にミラは泣きそうなる。

だが、自嘲気味に笑う彼のほうが辛そうで、

ミラは胸が苦しくなった。


(やっぱりイースのことを傷つけちゃってたんだわ)


 早く誤解を解いて笑って欲しい。

ミラは目線を合わそうとしない

イースの眼鏡の奥に潜んでいる黒い瞳をまっすぐに見つめた。


「ううん。あたしイースの優しさに甘えてたの。

あんな言い方じゃなくて、

もっとあなたのことを考えて言えばよかったって。だから……」


 何がいけないのだろうか。

言い訳を重ねれば重ねるほどイースの表情が固くなる。

言葉に詰まり動けなくなると、

今まで視線を下へやっていたイースがこちらを睨んできた。


「あんな言い方って君は何も言ってくれなかったじゃないか。

手紙で書いてくれればよかったんだ。

それなのに突然やって来て……」


 会いに来たことをこれほど疎まれていたなんて

思ってもみなかった。

イースに会いたかったのは自分だけで、

彼は手紙の中のやりとりだけを望んでいたのだろうか。

ミラはふいに浮かんできた考えに愕然とした。










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