まどろみの向こう側II@


「その時、彼らは自分たちの力が魔法だと思ったことは

なかったんだと思う。ただ使えるから使った。

それだけだったんだ」

「アルマ?」

 エマが眉を顰め問うてくるが『ジョーイ』は無視をする。

身体を折り曲げ血を吐く思いで、だから、と口を開いた。

「それが間違っているとは少しも思わなかったんだ。

驕っていたと言われればそうかもしれない。

自分たちの力にどんな可能性があるのか探るのは面白かったから。

どんなものが出来上がるのか、純粋に興味があったと思う。

たとえそれが兵器であろうと」

「あなた……」

 エマが半ば放心したように呟く。

信じられない面持ちで、何度も首を左右に振るエマを見つつ、

『ジョーイ』は話を続ける。

「力が使えるというだけで学問も仕事も思いのままだった。

どんなに貧しい生まれだろうと力さえあれば職に就ける。

力を使えることは名誉だったし、何より……。

何より、お金が、欲しかったんだと思う……」

 自分たち家族が生きていくにはそれしか方法がなかったから。

どうしても、どうしても金が必要だったから。

でも……。

 大きく目を見開いたまま固まっていたエマが、

こちらへ近づこうとして、また足をとめる。

『ジョーイ』はそんなエマを悲しげに見つめ、

自嘲気味に笑んでみせた。

「……天罰だったんだ、きっと……」

 拳を血がにじむほど握り締め、階段の脇にうずくまる。

けれど、俯き見つめる地面にはあの日の面影はなく、

『ジョーイ』は涙に濡れた顔を上げ、黄金色に輝く銀杏の木を見上げた。











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